中国魔術 混煉柳靈児法(簡介)

中国には鬼神を使役する方術があります。かなりの種類のものがあるのですが、 『混煉柳靈児法』という方術をご紹介します。これは、圓寂坊氏のサイトよりダウンロードさせていただきました。この方は僧侶です。

僕もまた道教道士の資格を持っています。2年間中国遼寧省の瀋陽市に住んでいたのですが、あちらでの職業は僧侶ではなく会社社長でした。道教の道長さんとも人間関係を持っていましたが、正直な話、中国大陸には僕が求めている「鬼神を使役する方術」はありません。文化大革命により破壊されてしまい、大部分は台湾へ逃れて来たということのようです。僕の仙道の師匠もまた台湾の仙人から方術を学んだとのことです。資料として役立ててください。何かを得る事ができるはずです。

混煉柳靈児法簡介

最近は阿倍晴明や陰陽道がブームですが、阿倍晴明の魅力の一つは、なんといっても式神という霊的存在を使役して行う様々な術にあるといえるのではないでしょうか。 元々この陰陽道というものは、易の思想体系をバックボーンとして古代道教の方術を組み合わせたものらしく、遣唐使の吉備真備が唐で学んで帰ったものらしいです。 【注:もちろん、それ以前の中国大陸との交流の中で、既にそれらしい学問や方術(天文・地理・暦数・遁甲・禁厭)は伝えられていたのですが、正式の体系的にまとまった方術としての陰陽道の術は、恐らく彼が伝えたものと推測されます。】 ですから、日本の陰陽道の中の方術の起源は、古代道教に在るといっても間違いではないでしょう。そこで道教の法術を検索してみると、鬼神を使役する法術は、たくさんの種類が存在していることがわかります。たとえば、六甲の神霊(陽神)や六丁の玉女(陰神)を使役する方法等を初めとして、幽霊を駆使する邪道的方法までさまざまあります。 実はこのページで紹介しようとしている「混煉柳靈児法」も、そのような霊的存在を使役する為の法術の一つであります。柳靈児と言う名のとおり、柳の木の神霊等を祭祀して使役する方法です。どういう効果があるのかというと、この柳靈は天耳と天眼の神通をそなえておりますので、術者の知りたいことはなんでも報告してくれたり、人生の様々な場面での適切な指示を与えてくれるというものです。(要するにあらゆる情報収集ですな。(^-^)v)その細かい作法などは、恐らく師について学んではじめて分るのでしょうが、大まかにその方法を紹介した資料がありますので、以下に翻訳してそのコンセプトを探り、皆様のご参考に供したいと存じます。    

◆◆◆ 混煉柳靈児法 ◆◆◆  

第一章  前言 凡そこの柳靈を練らんと欲する人は、必ずまず、貪りの心や邪悪の念を戒め、取り去り、道徳の心を養わなければなりません。もしそうでなければ、柳靈が降臨するどころか災いを招くことになるでしょう。この法術の目的は自らを利することではありますが、他人に害を及ぼすことではありません。ですから、たとえこの法術が成就しても、注意深く捧持して生活しなければなりません。そうでなければ、一度この靈通を失ってしまえば、後で後悔しても遅いのです。 以下に柳靈を煉る方法を順番に述べていきます。興味のある方は、熟読された後、そのとおりに実行すれば必ず効果があると思います。しかし、その中の設壇や畫符の方法に至っては、うまく繋がってなかったり、漏れているものがあるかもしれませんので、それはまた後で補いたいと思います。 【注:この本の中では、補ってないです。というわけで資料がありませんので、遺漏の所はどのようにするのかわかりません。ご寛恕の程よろしく。】

第二章  取木 黄道吉日(「通書」などの暦を見て探します。例えば民国六十六年六月十日は旧暦の四月二十四日で、牛宿がその日の値です。そこには、祭祀・出行・移徙・納采・嫁娶・修造・動土・上梁・入宅安門・開市開井・入殮・成服・破土・安葬可と書いてありますので、吉日のうちに入ります。また、六月十八日を見てみると、旧暦の五月二日で、胃宿がその日の値です。そこには、この日は凶多く吉少ない日で、何事も消極的に。というような記述がありますので、凶日とします。だから使えません。)を選んで、東から西に流れる川のほとりにある柳の木の枝を一本切り取ってきます。凡そ、この時木を取ってくる人は、斧を一振りするごとに取木呪を一回唱えなければなりません。回数は七回です。つまり、斧を七回振り下ろし七回呪文を唱えます。そして最後の七回目に力を込めて切り落とします。その後、後を振り返らないで帰ります。

【「通書」:台湾で占い師などが用いる分厚い暦、毎年発行されるが専門書の為値段は高いです。因みに私が台湾に住んでいた頃には一冊300元(1200円から1500円)ぐらいでした。しかし、その内容は多岐にわたりとても重宝なものです。奇門遁甲の局数なども簡単に取れます。】

取木呪…… 「柳靈郎、柳靈郎・生在荒郊古道傍・吾今請爾為神将・免在郊野受風霜・四時八節祭賽你・毎日香羹你先嘗・(ここから急いで唱えます。)赫赫揚揚・日出東方・神斧一断・早離此方・吾奉 太上老君急急如律令。」 赫(he4)

*ここにある、he4 とは赫という漢字の中国語の読み方です。he とは発音の仕方で4 は第4声のことです KOZEI。

持ちかえった木材は、流水に入れ、漬けておきます。その後、農暦(旧暦のこと)の五月五日或いは一月一日などの吉の日時を選択して、取り出します。そして、彫刻師などの木匠に要請して一体の人形を彫ってもらいます。その身の丈は二寸六分として陰数に符合させます。その人形は眉や眼、耳、鼻、口などの七竅をはっきりと美しく刻んでもらいます。左手は陽印にし、右手は陰覆にします。頭髪は双髻(昔の中国の子供が結っている、頭の両側上に髻を作るアレです。)を結い、身には緑衣を着せます。そして、硃砂と乳(人乳か?)を混ぜ合わせて調製し、黄色の紙に心臓・肝臓・脾臓・肺臓・腎臓を書き、巻いて腹中に収めます。次に鶏の鶏冠の血を採り、口に塗ります。さらに開光點眼(開眼供養)をし、その年月日時を誕生の八字として記して黄色の紙に書きやはり腹中に収めておきます。これで、いよいよ祭煉の段階に入ることができます。

【実はこの生年月日の八字は、亡くなったばかりの子供の八字を探してきて、それを書くという方法もあるようですが、ちょっと邪道に流れるように思われるので、やらないほうが良いでしょう。】

第三章  祭祀禮儀
ここに学者の便利の為に祭祀の禮儀(次第)を列挙して、将来修錬の時に用いることができるようにしておきたいと思います。 祭祀とは、人と神霊との交流の具体的な方式であり、その意味する所は、元より敬神ということであります。そして、さらには神に対する諸々の要求ということも重要な要素でしょう。いわゆる敬神とは、即ち天を敬い先祖を尊び、その徳を崇め功徳に報いるということです。神に対する諸々の要求とは、祈祷ということに他なりません。またその祈祷は個人に在っては消災降福、富貴長命、等を祈るものであり、社会大衆の為には風雨順調や国家鎮護などを祈るものです。 祭祀には必ず儀礼がつきものであり、儀礼には必ず方式があります。その内容と方式は以下の如くです。   

1.神前に牲饌(供え物)を配列する。   
2.神前のローソクに火を点じる。   
3.神前に三杯の清茶を供える。   
4.焚香迎神。

【これは、中国人が拝拝(パイパイ)の時に必ず行うやり方ですが、廟などで神を礼拝する前に、必ず三本の線香に火をつけて胸の前に立てて持ち、その神前とは真反対の虚空に向かって三度お辞儀をして天空から降臨する神を迎えるのであります。その後、神前に向かって本番の祈りを捧げるのです。】   

5.次に敬神の態度を表す為に、酒を杯に注ぎ、供えます。(一度目)   
6.擲杯莢を投げて、神明が降臨したかどうか尋ねます。   
7.もし、擲杯莢が神明の降臨を告げたら、再度酒を杯に注ぎ、供えます。(二度目)
8.ここで神明に願い事があれば、擲杯莢を投げて神明の諾否を問います。   
9.次に両手に冥紙と爆竹を捧げ持ち、神明の照覧を願います。
 
10.冥紙を焼き、爆竹に点火します。
 
11.三度目の酒を杯に注ぎます。
 
12.擲杯莢を投げて神明が食事を終わられたかどうか尋ねます。
 
13.食事が終わったなら、冥紙に酒を振りかけてその灰が飛散するのを防ぎます。


以上で儀礼の次第は終わりですが、少し説明を加えます。  

a. 牲饌 ……… 饌醴には三牲・五牲の区別があります。三牲は豚、鶏、魚の三品です。五牲は豚、鴨、鶏(鵞鳥)、魚、卵(または他の物)です。供物としては三牲の他に、山海の珍味を並べても良いです。
 

b. 茶酒 ……… 神霊を祭る時には必ずお茶と酒を奉献します。中でも酒は欠くことが出来ません。俗に、「拝神に酒なくば、擲杯莢を投げても応答がない。」といいますが、この意味は酒が無ければ神霊を満足することが出来ないという意味です。
 

c. 擲杯莢 …… これは「ポエ」といいまして、神霊に伺いをたてる時に用いる道具です。竹や木をちょっと太めの三日月状に削り出したもので、裏は平面に表は凸面に削ったものを 二つ作り、これを一対とします。神霊に伺いをたてるときには、これを地面に投げて、それが両方とも表の場合は「笑莢」と言い、神の冷笑を表し、吉凶が今だ明らかではないことを意味しています。また、両方とも裏の場合は「怒莢」と言い、神霊が怒っていることを表し、吉が少なく凶が多いことを意味しています。以上の場合はどちらも、神霊の答えが「否」という ことです。そして、一方が表で一方が裏の場合を「聖莢」と言い、神霊が願い事を快諾したことを意味するのです。
   

因みに神霊に願い事をする時には、まず願い事が成就した時にどのようにして神に報いるかという条件を提示してから、祈求すべきです。そして、願いが成就した暁には吉日良辰を選んで報告を行い、先に提示した条件を必ず実行しなければなりません。
  

第四章  開光點眼
 さて、次に開光點眼の儀礼ですが、このやり方も前章で述べたやり方に基づいて行います。違う所は、五牲の中の鶏を兎の頭に換えること、そして魚を魚の干物に換えることぐらいです。また、当日には生きたオスの白い鶏を用意して、その鶏冠の血を採って開光點眼に用います。さて、神前の線香ローソクに火を点じてから、以下の次第で開光點眼を行います。  

まず、黄道吉日を選択します。(先に挙げた通書などの暦を見て、「宜開光點眼」の文字のある日を見つけて用います。)静かな部屋で行います。
 

(一) 浄水 …… 浄水呪を唱えます。
    「北斗七星・奉勅降水中・収妖不去斬・謹調北斗七星前・今日勅降在水中・収除一百合之鬼・若有不去斬者・急急如律令。」

(二) 水讃 …… 水讃呪を唱えます。
    「先天眞水・浄洗靈台・楊枝一滴洒塵埃・凡境即蓬莱・滌穢消災。香林法界開・帰命蕩魔解穢大天尊。」  

(三) 浄口 …… 浄口呪を唱えます。
    「丹朱口唇・吐穢除氛・舌神正論・通命養神・羅于歯神・却邪衛眞・喉神虎賁・氣神引津・心神丹元・令我通眞・思神煉液・道気長存・急急如律令。」  

(四) 浄心神 … 浄心神呪を唱えます。

    「太上台神・應変無停・驅邪縛魅・保命護身・通達仙靈・智慧明浄・心神安寧・三根永固・魄無表傾・急急如律令。」  

(五) 浄身 …… 浄身呪を唱えます。
    
「靈寶天尊・安慰身形・弟子魂魄・五臓玄明・青龍白虎・隊仗紛紜・朱雀玄武・侍衛我身・急急如律令。」
 

(六) 化爐 …… 化爐呪を唱えます。
    
「謹調破穢・清水生名・吾雷使者・動得妖精・復水國去・速去萬里・摧得奉行・不得久停・急急如律令。」
 

(七) 浄壇 …… 最後に浄壇呪を唱えます。
    
「太上説法時・金鐘響玉音・百穢蔵九地・群魔護騫林・天花散法雨・法鼓振迷沈・諸天赓善哉・金童舞瑤琴・願傾入霞光・照依帰依心・法大法蚤穢・翼侍五雲深・急急如律令。」 赓(geng)
浄壇が終われば全ての準備が整った事になります。

ここで、予ねて準備しておいた柳木の童子像を敬虔に取り出し、開光點眼を行います。
開光點眼呪を唱えながら、用意しておいた鶏の鶏冠の血を筆につけて次の順序で点じて行きます。

「鷄是靈鷄白鳳鷄・身穿羽紗白羅衣・頭戴雄冠脚帯距・堪称五徳有信義。今日請求冠上血・得藉霊光取生気。點眼光明通天竅・起駕發輦顕神機・年利月徳・天地開泰・吉日良時開光大發彩。挙手先行来點眼・(ここで眼から点じ始めます。)左眼知天機・右眼識地理・日月両眼照分明・視。其次来點耳・左耳能聴萬人言・右耳察奪萬人語・聡。三光星斗則點鼻・戒香定香與慧香・解脱智見開信香・馨。東西南北是四方要點口・開口禍福並吉凶・能判善悪論陰與謇陽・語。中央口内要點舌・食茶並物能知味・恭敬表誠意・食。再来點起面・(次に額などの顔の部分です。)頭上額上額再光彩有靈氣・押於邪魅能可除・光。両辺體形須點頤・赫赫威風凛凛殺気騰騰・鎮宅光明。五關七竅都點完・(五關七竅が皆終われば次に体の各部を点じていきます。)則點心背在中關・心通精霊・背受天命・運籌帷幄・心動静脩按腹背・達威靈。點起両手・左手持剣右手執令・點起両足踏風雲・降龍伏虎鬼神驚。點爾三十六骨節・都端正五臓六腑齊完明・神通広大顕威靈・庇佑人民萬事亨・神安人安・大吉、大利、大進。點完。(点じ終われば金銭を捧げます。)則献金銭。」    

第五章  入寶 
開光點眼が終わりましても、木像には未だ靈が宿っておりませんので、入寶という儀式が必要となります。 入寶というのは何かというと、木像の天靈(頭のてっぺん)の上に孔をあけ、白蓮(水花粉・蓮の花の粉)と神蓮(銀硃・硃砂のこと)そしてスズメバチを封入します。これらは開光點眼が終わってから一度に完成させます。これらの物を封入するときに以下の呪文を唱えます。

「天與我機・共你相随・你存我隠・免使人知・吉凶之事・惟我與・太上使我・正隠於己・急急如風火雷令勅。」

この時注意しなければならないのは、封入する蜂の数と方法です。 まずその数ですが、封入する物の数は三才、五行、八仙、三十六天罡、七十二地煞数などの数に応ずるべきです。ですから、封入する蜂の数は最少でも三匹という事になります。最も多いのは百八匹ということなのでしょうが、一般に三匹入れる例が多いようです。又、蜂はスズメバチの方がミツバチより効果が大きいということです。 また、蜂を入れる時は必ず生きた蜂を入れなければなりません。生きた蜂が木像の中で死ぬことによってその靈が木像に憑く事になるのです。

これらの蜂の靈たちは、次章で述べる祭煉の後、祭祀を行う人の法の成就を助けてくれる存在となるのです。もし、死んだ物を入れるならば、その靈は外にある事になり、いかなる作用も発生することはないのです。(蜂が可哀想なのでお勧めできません。(-_-;))
   

第六章
  祭煉 
甲子の日や庚申の日などの吉神の日を選んで祭煉を開始します。毎日、朝の清清しい時間を選んで、面を東に向け、深く三回息を吸いこみ三炁咒を一遍もしくは三遍唱えます。

三炁咒 …… 「天生雲龍・道本上昇・平烈正氣・利於太清・輔弼正道・行於中正・六甲洞元・九天超形・福延子孫・仙行自眞・次及人皇・人敬長生・六丁九炁・秘密眞誠・敬之修吉・昊天貴命・久久得道・常任之清・開此眞句・與道合眞。」

そして、夜の11時過ぎに、静かな部屋に壇を設け、線香をあげて追魂現形符を一枚焼き、静座をします。次に左手を斗訣、右手を剣訣にして追魂現形咒を49回唱えます。

追魂現形咒…… 「魂靈柳靈・九竅皆明・外具四象・内全五行・我乃人道・你乃木精・上奉帝勅・令爾同盟・通靈達聖・早現眞形・随吾呼召・擁護吾形・邁善送禄・逢悪助兵・或取財寶・或摂香羹・疾来疾去・勿得延留・在家出家・晝夜相親・千人難見・萬人難尋・凡所在處・左右随跟・他時行満・功與同分・稍有違慢・上奏天庭・罪當受示・阻淪・眞形速現・速現眞形。吾奉 東嶽教主撫玄極帝君令・攝密公七遍眞言曰。唵嚙臨正吟喞急速哆咡。」              

この呪文を唱えている時に、震動を感じて蜂の羽音が遠くから近づいてくるように聞こえてくるようになれば、効験が出始めたということです。その前後の夜、就寝中に柳靈仙が夢の中に現れます。これによって柳靈仙が顕靈し始めたという事が分るのです。 霊験が現れたその翌日に、鳴耳咒を唱え、鳴耳符を焼きます。

鳴耳咒 …… 「山有山上・水海有海・中槎五龍・叱咤呵唵轟・吾奉 太上老君急急如律令勅唵轟。」
そして、また蜂の羽音が聞こえてくれば感応があったと知るのです。また、一日中蜂の羽音が耳の中で響いているように聞こえるようになれば、この段階の終了です。 次にその翌日に、開喉呪を唱え、開喉符を焼きます。

開喉咒 …… 「赤山東・赤山東・七七定・九九成・吾奉 太上老君急急如律令勅唵轟。」 そして、仙人が耳の中で一日中語りかけてくるのが聞こえるようになれば、この段階の終了です。

上記の状態(顕靈)になったら、静かな場所で今度はその柳靈仙と契約を取り交わして、一度この状態から抜けます。これを「訂盟」といいます。以後は追魂現形咒を唱え、追魂現形符を焼くだけで壇上に降臨して術士の疑問や聞きたい事に答えてくれます。

訂盟の呪文… 「吾欲使汝上天・與吾上天・使汝入地・與吾入地・人間百務・與吾通報・他日行満・功鬼一切・行與汝平分・若不悛・上奉 天庭;吾奉太上老君急急如律令勅唵轟。」

これで、混煉柳靈児法は完成です。もし何か解らないことや知りたい事があれば、柳靈仙がたちどころに耳の傍で教えてくれるようになります。ただし、この法は大変穢れを嫌いますので、顕霊の後には壇に犬や猫などの動物、また服喪の人やお産が終わってすぐなどの血の穢れのある人などを近づけてはいけません。そして、本来無徳の輩が徳を積む事も無くこの法を行うならば、必ず災厄に見まわれる事になりますから、自分に徳が具わってないと感じる人は、よくよく善根功徳を積むように心がけてください。

なお、上記の追魂現形符、鳴耳符、開喉符の図は次章の畫符の所で図示します。    

第七章  畫符
霊符を書くにあたっては、必ず一定の方式に則って行わなければなりません。一般の人達はこの道理が分らない為、適当に書くだけ書けばそれで完成したものと考えていますので、鬼神に笑われる事となります。 符を書くときには必ず敬虔な心で誠をもって書き、また果物・酒・線香・蝋燭なども必ず供えておかなければなりません。まず線香を焚き、祈りを捧げ、礼拝をします。次に右手は文訣を結び(親指で中指の中節を押さえます。)、足は丁字罡歩(左足を横に踏んで前に置き、右足を立てに踏んで後ろに置きます。このようにして丁字形にします。)を用います。左手は机の端を押さえるように置き、目はこれから勅しようとする物を見つめます。口を閉じて三口気を呑み込んでから、呪文を唱えます。呪文を唱え終わる毎に歯を三回カチカチと噛み鳴らし、香炉に白檀香を三度くべます。それからまた次の物に対して法の如く呪文を唱えていきます。その時の咒文は少し早口に唱えます。   

◇ 勅紙呪
    「玉帝勅吾紙書符・打邪鬼・張張皆神書・敢有不伏者・押赴鄷都城・抬急急如律令」   
◇ 勅水呪
    「此水非凡水・北方壬癸水・一點在硯中・雲雨須臾至・病者呑之・百病消除・邪鬼呑之成粉砕・急急如三奇帝君律令」   
◇ 勅硯呪
    「玉帝有勅・神硯四方・金木水火土・神硯軽磨・霹靂電光轉・急急如律令」   
◇ 勅墨呪
    「玉帝有勅・神墨炙炙・形如雲霧・上列九星・神墨軽磨・霹靂糾紛・急急如律令」   
◇ 勅筆呪
    「居収五雷神将・電灼光華・上則護身保命・下則縛鬼伏邪・一切死活滅道我長生・急急如律令」   
◇ 下筆呪
    「天圓地方・六令九章・令吾下筆・萬鬼伏蔵・急急如律令」

符を書く時は、符紙を注視し精神を集中して書き、ひとたび筆を下ろすや、一気呵成に書き上げ、その筆勢に淀みがあってはなりません。また、所謂「誠ある者は靈明」という言葉どおり、心に誠無く精神も集中できなければ、気を注いで符に霊気を込めることはもちろん出来ません。それでは符を書いて何の効験も無いのは当たり前のことであります。 符を書き終えたならば、その符を香炉の煙の上で何回か円を描いて廻しながら、次の呪文を唱えます。

「神符爐中香烟正・奏得玉皇上帝門・奏噴玉皇行勅令・四邉官将顕威靈・奉請五方勅符帥・勅符三帥主三帥将軍童子・即奉請何人来書符・神師祖師・弟子領其来書符・天上書符天也動・地下書符地也崩・田上書符草也死・海内書符海也乾・神廟書符廟也倒・對人書符人長生・對鬼書符鬼消蔵・對神書符神遷離・書起神符到東方・東方百鬼走忙忙・書起神符到南方・南方百鬼無處蔵・書起神符到西方・西方弥陀破現身・書起神符到北方・北方眞武大将軍・書起神符到中央・中央百鬼走忙忙・書下神符一道有准准。」
以上の操作を経て、靈符は使用に耐える事になります。先に述べました追魂現形符・鳴耳符・開喉符なども、均しくこの方法に則って書かなければなりません。


↑ 追魂現形符    


鳴耳符         

                               ↑ 開喉符                             


――― 混煉柳霊児法 終わり ―――


以上、混煉柳靈児法いかがでしたでしょうか?コンセプトはやはり「拝好兄弟」や「黒白舎人」の法と似たようなものですが、呪文と符をきっちり使いますので、なかなか説得力があります。また、この法の考え方を分析してみますと、柳の木の霊だけでは自由に飛びまわるパワーに欠けるので、蜂の霊を合体させて一つの柳霊仙という存在に昇華させて、それを眷属(家来の意味ですが、西洋などでは使い魔と言います。仏教では護法と言います。陰陽道では式神です。)として使役するというものなのでしょう。 前にも書きましたが、ちょっと邪道に流れる方法に、死んだばかりの子供の八字(生年月日)を用いて開眼する方法もあるようですが、それは結局、何もわからない幼子の魂を束縛して使役する事になると思います。ですから、もしそんなことをすれば、その術者の徳を大きく損じる事になりますので、絶対にやらないほうが良いと思います。効果はその方があるかもしれませんが、お勧めできません。 最後に、またいつも同じ文献からの引用で恐縮ですが、「平妖伝」の中に鬼神を使役する時の心構えを記した部分がありますので、ご参考の為に以下に引用してみます。もちろん、「平妖伝」の中で使役する鬼神は神将と言って、柳霊仙とはレベルもパワーも遥かに上ですが、一応鬼神を扱う方法は共通であろうと思いますので、参考になると思います。   

―平凡社 中国古典文学大系 「平妖伝」から―


「よくよく話して聞かせようと思っていたのはそのこと。 ―中略― しかる後、これを呼べばたちどころに応じ、これを使えばたちどころに従う。はじめはまず半身のみ現わすこともあるが、後には全身を現わす。もしその容貌が凶悪であっても恐れてはならぬ。また醜悪であっても戯れ笑ってはならぬ。これを敬うこと父母の如く、これに親しむこと朋友の如く、これを使うこと奴僕の如くすべきである。もし然らずんば必ず神の怒りをまねく。また、およそ神将を招かんとするときは、あらかじめ行うことと問う語とを定めておかねばならぬ。もし招いておいて用もなければ、神将は信用しなくなり、後になって招いても、再び来なくなる。」

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以上です。『平妖伝』は僕も愛読書の内のひとつです。単に読み物としても十分に楽しめます。今後もたまには東洋系の召喚魔術も紹介していきます。

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